yon-1997’s blog

架空地図と社会学的想像力とその他

ポリアモリー(複数愛)の視点から見た日向坂46の楽曲

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もしも友達の彼氏を好きになってしまったら?

 

 

突然ですが、私はとあるセクシャルマイノリティです。

それは、同時に複数の人を好きになってしまう性質です。それを、ポリアモリーといいます。

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ポリアモリーとは、関係者全員の合意を得たうえで、複数の人と恋愛関係を結ぶ恋愛スタイルを指します。

この記事ではこのような定義もなされていますが、私は厳密には、複数の人と恋愛関係を同時に結んだことはありません。ですから、ポリアモリストとは言えないかもしれません。

 

ですが、昔から女友達が多く、彼女がいる状態でも、別の女友達とどこかに遊びに行ったり、その人のことを尊敬したり、その人と2人きりでいる時間にとても満足感を得たりしていました。

 

そのことについて、付き合っている女性に話してもいました。幸いにも、「浮気だ」と言って怒る人はいませんでしたが、中にはその話を別れ際にして、泣かれてしまったこともあります。

 

私の周りの女友達の方々は、皆自分の考えをしっかり持っており、とても尊敬できました。人間として、とても好きでした。

また私は(おそらく)異性愛者で、それでいて異性の友達が沢山いたので、異性と親密になるということに特別感はありませんでした。

 

しかしそこで直面する壁。それは、「恋人だけが唯一絶対的に上位の関係性なのか?」ということ。

 

恋人と上手くいかなくなった時、必ず浮かんだのは女友達の顔です。「私は彼女ではなく、この人と付き合った方が、幸せなのではないか?」という考え。でももちろん今の彼女のことだって好き。人にはいろいろな顔があって、尊敬できるところもあれば、もちろんおかしいと思うところもある。しかし、それを恋人だからって矯正させる、何かを強制して直させる権利はあるのか?恋人だけを100%好きでいて、他との関係を蔑ろにしなければならないのか?

同時に複数の人を好きになってはいけないのか?

 

そんな考えに苛まれていた時、一冊の本に出会いました。

きのコ著の『わたし、恋人が2人います。複数愛(ポリアモリー)という生き方』という本です。

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この本で、恋人が複数いてもいいのだということを認められた気がしました。

しかし、大学でいくら性的マイノリティの課題と尊厳を勉強しても、ポリアモリーについて耳にはしませんでした。

バイセクシュアルやレズビアンXジェンダーの友人はいても、トランスジェンダーについて世界仰天ニュースで見ても、彼ら彼女らがいくら社会的に認められようとされていても、ポリアモリー的考えは未だに「浮気」の一言で片付けられます(もちろん不誠実ではいけないとは思いますが)。

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普通、恋人というのは一対一の特別で、排他的な関係です(そして普通、恋愛関係とは異性と結ぶものです)。

普通、付き合っている異性以外を好きになってはいけません。

普通、付き合っている異性以外と2人きりで会ってはいけません。

普通、付き合っている異性以外と性行為をしてはいけません。

普通、普通、普通、普通、

普通!普通!普通!普通!

ふっっっっつううううううう

 

頑張って、普通にすごしましょう。

 

私には無理です。

 

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日向坂46に、「どうする?どうする?どうする?」という楽曲があります。

4thシングル「君しか勝たん」に収録されている、一期生の曲です。MVに竹中直人が出演しているという強烈なインパクトこそありますが、私はこの曲の歌詞にものすごく思うところがあります。

あ、私自身は、この曲はとても好きです。MVで私の推し、高瀬愛奈が沢山出ているということを抜きにしても。

 

この曲は、

もしも友達の彼氏を好きになってしまったら

何も告白せずに胸にしまいますか?

それとも友達だから本当のこの気持ちを

彼女にだけはちゃんと伝えますか?

という歌詞で始まります。

この楽曲の歌詞は、大切な友人の大切な恋人を好きになってしまってどうすればいいのかわからなくなるという、とても切なく、苦しい、恋愛の辛い局面がよく表現された素晴らしいものです。

ただ、それを私の恋愛観に当てはめると、いろいろ思うところはあります。

 

私は友達の恋人を好きになったことはありませんが、恋人がいる友人を好きになったり、好きな友人に恋人ができたという経験は沢山してきました。

 

歌詞は次のように続きます。

 

誰にも嘘なんかつきたくないし裏切りたくはない

もちろん自分にも正直でいたい

矛盾してるってわかるジレンマ

 

LGBTQなどと括られる性的マイノリティのアイデンティティが重視される中(そして何故かビジネスの場の雇用だなんだって語られる中)、自分の恋愛感情に正直でいることは、当たり前のことであると認める動きが出ています。

 

しかし、恋人がいる相手を好きになることは、タブーのように扱われる。

 

これっておかしくないですか?

 

恋人がいようがなんだろうが、私はその人のことを人間として大好きなんですよ?

 

それなのに、誰か別の人がいるから諦めなきゃいけないって。その別の人は私にとって何なんですか?

 

もっとひどいのは、私が大好きな異性の友人が、恋人が出来たという理由で突然二人で会ってくれなくなるということ。

 

あなたは私を異性だから会っていたというわけではないはず。それなのになぜ、恋人がいるというだけで関係が断絶しなければいけないのでしょうか?

 

飛んで二番のサビ。

 

友情とるか?恋をとるか?頭が痛い

出口はどっち?

ホモ・サピエンスの遠い昔からのテーマ

これを解ける人がいたなら

そう間違いなくノーベル賞でしょう

 

作詞の秋元康はこう書いていますが、モノガミー、少なくとも日本におけるモノガミーは、明治時代以降のロマンチックラブイデオロギーによる新しい概念のはずです。原始以来、人は、少なくとも日本人は、複数での性愛関係・恋愛関係を結んでいたはずです。

この楽曲には参加していませんが、二期生の宮田愛萌が大好きな源氏物語平安時代の文学・社会では、複数の相手と逢瀬を重ねることもあったはずです。

 

恋愛を排他的な関係とすること。

恋人というだけで、人付き合いにおいて、「あなたはあの人(=恋人)よりも劣位の関係です」と明言する、人として冷酷な関係。

 

私はそんな恋愛規範で生きることはできません。